クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
「そういうことでしたら……私、ディエス家でお世話になります」

リアナの言葉に、リカルドがほっとしたように表情を和らげる。

「ありがとう。両親には事情を説明しているから、気兼ねなく過ごして欲しい」

「はい、ありがとうございます。受け入れて下さるお義父さまとお義母さまに感謝致します」

リアナがそう言い微笑むと、リカルドの醸し出す空気がますます穏やかなものになる。

居心地の良い雰囲気に安心してリアナは問いかけた。

「忙しくなるようですけど、何か問題が起きたのですか?」

「いや……大事ではないが少し時間がかかる」

リカルドは曖昧に返事をする。騎士団関係者以外には言えないような任務なのだろうと察し、リアナ素早く話題を変えた。

「ディエス公爵家に移るのは、七日後の夜会が終わった後にしたいと思います」

夜会は王家主催のものだ。

末の王女の婚約祝いの為の会で、主だった貴族は皆参加する。

当然ベルグラーノ伯爵家も招待されており、妊娠したからと言って欠席は有り得ない。

しかし、リカルドは浮かない表情だ。

「身体のことがある。夜会は欠席した方がいいんじゃないか?」

「私の場合、話に聞いていたような体調不良は有りませんから大丈夫です。お酒は飲まないし、ダンスも遠慮して大人しく過ごします。それに相当な理由がない限り王家の夜会は断れません」

リカルドは不満そうだったが、それ以上反対してはせずに、リアナの体調についていくつか質問して来た。

その後屋敷の使用人達に幾つか指示を出してから、慌ただしく屋敷を出て行った。


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