クールな騎士団長はママと赤ちゃんを一途に溺愛する
思いがけない敵
(エルドラ王女を連れて急いで館に戻ろう)

隠れていた木陰から出て、王女の手を取ろうと決意した。

しかしそれより早く騎士たちが駆け出した。こちらに来ようとしているのだろう。

この時点エルドラ王女がでようやく騎士の存在に気付いたようだった。

驚いたようにその場で立ち尽くしたが、騎士たちが足音荒く近づいて来るのを見て悲鳴を上げて身を翻す。

リアナは一連の状況に茫然としていたけれど、「待て!」と響いた怒声で我に返り木陰から飛び出し王女の元へ駆けつけた。

「リアナ! どこにいたのよ!」

リアナに気付いたエルドラ王女が、苛立ったように叫ぶ。

「こちらです」

見当違いの方向に向かおうとしているエルドラ王女の手を強引に退き領主館へ向かい走り出す。

状況が状況なだけに、エルドラ王女も文句を言わず従った。

それでも鍛えた騎士からいつまでも逃げられる訳がない。

彼らは池を迂回して来ているけれど、その内追いつかれてしまうだろう。

(それまでに館に戻らなくちゃ)

館にはリカルドの部下の騎士たちがいる。館に到着すれば安心だ。

(だけど、間に合うかしら)

不安になりながらも必死に駆けていたが、掴んでいたエルドラ王女の手から力が抜けた。

驚き振り返ると王女が地面に座り込み息を荒くしている。

「エルドラ王女様?」

「も、もう駄目。私こんなに走ったことないのよ」

苦し気な声にはっとした。王女は病弱という話を思い出したのだ。

しかし、今立ち止まっては大変なことになる。

「王女様、あと少しです。頑張ってください。あの騎士たちは危険です」

励まし王女の手を力を込めて引く。

「私を脅すなんて何者なのよ」

文句を言いながらもエルドラ王女は立ち上がる。けれどその顔色は蒼白で相当無理をしているのだと伝わって来た。

< 93 / 117 >

この作品をシェア

pagetop