ロマンスの王子様
「明穂ちゃん、何かあった?」

芳樹さんが声を聞いてきた。

「えっ?」

そう聞き返した私に芳樹さんは目を伏せると、
「いつもと様子が違うと言うか、覇気がないと言うか…」
と、呟くように言った。

「…そう見えます?」

そう聞いた私に、
「見える」

芳樹さんは答えた。

「ケンカしたの?」

「していません」

私は首を横に振ると、
「ちょっと、悩んでいることがありまして…」
と、言った。

「悩んでいることって?」

「奥原さんとどうやって向きあえばいいのかなと思いまして…」

私はそう言うと、天井をあおいだ。

「――私、奥原さんのことを好きになったんです」

それに対して、芳樹さんは何も言わなかった。
< 112 / 121 >

この作品をシェア

pagetop