ロマンスの王子様
――俺の妻なんだから

少し前は、このセリフを言われることが嫌だった。

私のことを好きじゃない、むしろ嫌っているくせに何を言っているんだと思っていた。

都合のいい時に妻扱いしてるんじゃねーよと、心の底からの暴言を吐きたくなった時もあった。

だけど、今となってはこのセリフが嬉しくて仕方がない。

「私、ちゃんとできますかね?」

「何が?」

「…お父さんとは、初対面ですし」

呟くように言った私に、
「気にするな」

奥原さんはポンと私の頭のうえに手を置いた。

「変に着飾るのも不自然だし、お前はお前のままでいい。

父親に気に入られる努力もしなくてもいい」

「いや、それくらいの努力はした方が…」

「気にするな」

奥原さんは大きな手で私の頭をなでた。
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