ロマンスの王子様
「お父さんがくるんですか?」

「ああ」

そう聞き返した私に、奥原さんは首を縦に振ってうなずいた。

奥原さんのお父さんに会うのは今回が初めてだった。

何故なら、
「お父さんは海外に住んでいるんですよね?」

奥原さんのお父さんは仕事を引退して海外に住んでいるのだ。

「俺の奥さん――明穂の顔を見たいからくるんだって」

「そ、そうなんだ…」

そんな理由で日本にくるんだ…。

まあ、お父さんと顔をあわせることは特になかったからなあ。

それよりも、
「私のことを“俺の奥さん“って言いましたよね?」

私の聞き間違いじゃなかったら、奥原さんは確かにそう言ったはずだ。

「当たり前だろ」

奥原さんはそう言って私の顔を覗き込むと、
「お前は俺の妻なんだから」
と、言った。
< 92 / 121 >

この作品をシェア

pagetop