Match maker
雅実との約束の日

随分と早く待ち合わせに着いて、もて余す時間に逃げ出したい心境だ。

【“NO”出されても、いつも通り“stop”かけたらええねん】

SS0はそう言うけれど…

“いつも通り”がどのようなものか、思い出せずにいた。

到着した雅実の表情から…

今日のこの時間は楽しいものではないのだと悟る。

差し出された雅実の0を俺のと重ねる。

…今日で最後になるかもしれない…

続く沈黙。

そこに

「…お話、終わりました?」

にっこり笑って俺の後ろから品川さんが顔を出した。

「…まだ、今から。」

そう答えた。

「あ、じゃあ…待ってようかな。」

待つ?

俺達の話が終わるのを待つつもりなのか。

「…長くなりそうだから、報告は明日にでも、ね?」

結局、そう言って微笑み、出て行った。

なぜ彼女がここにいたのか。

今はどうでも良かった。

一瞬、俺の方に睨むような目を向けた雅実が

「…解消して下さい。それ。」

俺達の0を指差して言った。

「……」

きっと、そうなんだろうと予測していた。

いつも通りの“stop”なんて…どう出せばいいのか。

ただ、どこか遠くからこの状況を見ているかのように、頭が働かない。

俺達の0に手を伸ばした。

【待て、待て、待てーぃ。】

静かな店内に響いたのは…

0の声。
< 129 / 187 >

この作品をシェア

pagetop