Match maker
「…“少なからず”俺の事は、まだ好きなの?」



俺の質問に、雅実は直ぐに俯いた。



今の話から

そうなのだと、想像はつく。

だけど雅実から聞きたかった。



この前のロードバイクの日から変わったのかもしれない。

雅実が俺の気持ちにそう思ったように。





雅実の顔を覗き込むように、返事を待った。



いつまでもそのままの雅実を急かすように

もう少し顔を傾けた。



真っ赤になった雅実が少し顔を上げると、小さく頷いた。

心臓の辺りがこそばい。少し苦しいような安堵感。



「そっか、良かった」



繋いだ彼女の手にそっとキスする。



「会わずに悩むくらいなら、会って悩む方が…ずっといいね」



そう言って、その手を引き寄せる。

少し近づいた体を今度は右手でぐいっと引き寄せた。



「会いたかった」



それなら、“少なからず”雅実も…

こうしたいと思ってくれているだろう。



軽いキス。

ほんの少し体を離すと、雅実の目が俺に向けられる。



もう一度唇重なるその時に



「…私も」



小さな声が、胸を熱くする。



それは…雅実だからで…

俺は、この人が好きだ。



分かりきった事を、触れあう唇がまた教えてくれた。



「確かに、雅実が他の男性に寄り添って歩いてたら…嫌だな」





そう言った俺に、雅実が微笑む。

この顔が見たかった。



「…笑ってて欲しい、やっぱり。雅実が笑うと、嬉しくなるから。…あれ、これも自分本意の考えなのか…」



雅実はどう思うか…





「自分本意じゃない。私もそう思うから」



そう言った彼女に俺もつい顔が勝手に笑ってしまう。



もっと、ずっと…

笑っていて欲しい。そう思った。
< 138 / 187 >

この作品をシェア

pagetop