Match maker
…そんな事、聞くものだろうか。

というか、彼から質問することも珍しいけれど。

「田中さんは?」

「キス?」

「ありますよね?したことくらい。」

「…まぁ。」

「キスが出来るって…やっぱり…」

「え?」

「キスが出来るって、やっぱり、特別なんだと思います。す、少なからず…好意というか…特に…その…」

「ごめん、よく…分からない。」

「キスをしたいと思うのは、少なからず相手の事を、す、好きなんだと思います!!」

「好き…?」

「したいと…思いました。私は。」

さっき。だから、振り向いた。その事を彼も分かっているだろう。

言ってしまって急激に恥ずかしくなる。

顔が見られずに済む前で良かったと思う。

…う

重い…

止ま…る?そう思うとすぐに

いや、足を着いて止められた。

それに振り向いた瞬間、風に舞う髪を避けもせず

「ごめん、我慢出来ない。」

そう言って、私の頭を優しく、抱えるようにキス。

離された唇に、目を開けると

もう一度、軽いキスをされる。

「これ以上は、同じ比重になってからに、する。」

そう言った彼に頷いた。

…この人も、こんな、目をするんだな。

こんな、感情的なキスも。

再び漕ぎ始めたロードバイクに

今度はこの距離さえ…いらないと、思った。

< 60 / 187 >

この作品をシェア

pagetop