エリート外科医といいなり婚前同居
「あ、これが千波さんのお母さんですか?」
「うん。……って言っても私、顔は覚えてないんだけどね」
とはいえ、写真で見るとやっぱり母への恋しさがこみ上げる。記憶の中にその姿はないのに、不思議と〝この人がお母さんだ〟って、確信できる。本能的に血のつながりをわかっているみたいだ。
しみじみと感傷に浸りつつ一冊目を見終わると、拓斗くんが次の一冊を開く。
「これは二、三歳頃ですかね」
「そうだね……」
さっきより、ページを捲る手が少し緊張して震えた。
途中まで写っている母がいつ登場しなくなるのかと思うと、胸が切なくなる。
あ……この辺だ。その頃は母が登場しなくなるだけでなく、そもそも写真の数が少なくなっているので、すぐにわかった。
父は無理をして明るく笑っているけれど、私の表情が暗い。まだ小さいから、自分の母親が死んだという現実を、なかなか受け入れられてなかったのかもしれない。
そのあたりの写真は飛ばすようにしていたら、二冊目はあっという間に見終わった。
次は、三冊目。幼稚園くらいだろうか。