エリート外科医といいなり婚前同居
一緒に暮らすことに慣れてきたからって、少し警戒心がなさすぎなんじゃないか?
酔ったきみの姿に、こっちはどれだけ心がかき乱されたと思っているんだ。
俺の性別が男だって、ちゃんと理解してるのか……?
くすぶる思いを抱えつつ、たどり着いた千波の部屋の前。しかし俺はドアの前で数秒立ち止まったのち、隣にある自分の部屋へと方向転換した。
肘を使ってドアノブのレバーを下げ、体でドアを押して室内に入ると、自分のベッドの上に千波の体を下ろす。
「ん……」
小さく声を漏らして身じろぎした千波が、薄っすらとまぶたを開ける。俺はぎしりとベッドを軋ませながら彼女の上に覆いかぶさり、静かに彼女の瞳を見つめた。
目を覚ましたとはいえ、千波ははまだ夢の中にいるようにぼんやりした表情だ。
今にも襲い掛かられそうな体勢だというのに相変わらず無防備な彼女に、あふれ出す感情をぶつけてしまいたくなる。
「千波」
そっと呼びかけると、千波は小さな唇を動かして「はい」と返事をした。
気の抜けた表情を見る限り、やはりまだ夢と現実とがまだハッキリしないようだ。