雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

陽和「しゃ、社長!?」
雨宮「ん、な」
陽和「社長! しっかりしてください! 何があったんですか」
雨宮「なに、って」
陽和「起きれますか? 私が誰か分かります?」
雨宮「はな、ざと……ひ」
陽和「そうです、花里」
雨宮「ひ、よ……こ」

ピヨピヨピヨピヨ

陽和「ひよこじゃないですよ、ひより!」
雨宮「……ひよりでもひよこでも、どっちでもいいだろ。さっきからうるさい奴だな。もう少し寝かせろ」
陽和「寝かせろって、まさかここで寝ていただけ……とか?」
雨宮「いや、水を取りに来てここで力尽きただけだ」
陽和「それを倒れたって言うんですー!」

よくよく雨宮を見ると、髪がボサボサで目の下のクマが酷い。
一目で寝不足だと分かるその体は鉛のように重く、抱え上げようにもびくりともしない。

取りあえず、陽和は冷蔵庫から水を出し(冷蔵庫の中は水とお酒しか入っていない)、キャップを開けて雨宮の口元へ持っていく。

陽和「社長、お水です」
雨宮「うん」
陽和「うん、じゃなくて、飲んでください」

何とか上半身を起こし、気怠そうに水を飲む雨宮。
唇から零れた水滴を手の甲で拭う。
その横顔が妙にセクシーで、陽和は思わず顔を背けた。

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