雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

1章おまけ



〇総合病院からAMAMIYAFOODS本社へ戻る車の中。
榊は運転席、雨宮は後部座席に座っている。

雨宮「どうして僕に断りもなく、専属秘書など雇おうとしたんだ」
榊「さっき説明した通りですよ」
雨宮「お前の方から頼んだそうだが、なぜ彼女なんだ? 身元は確かなんだろうな」
榊「もちろん身元は調べていますよ。ふふふ」
雨宮「何が可笑しい?」
榊「いえ、社長に面と向かって文句を言える女性は少ないですからね。彼女はきっと社長を変えてくれますよ」
雨宮「別に変えてもらう必要などない」

ふてくされたような顔で、窓の外へ視線を移す雨宮。

榊「似てると思いませんか?」
雨宮「なにが」
榊「社長の初恋の相手、七海さんと、花里さんですよ」
雨宮「っな!? いつの話をしてるんだ! 七海は幼稚園の頃の同級生で……それに別に初恋の相手ではないぞ」
榊「七海さんも元気があって物おじしない人でしたね。いつも社長を追いかけまわしては泣かせて、私はそのたびに坊ちゃ……いや、社長を慰めていました」
雨宮「もうやめてくれ」
榊「なのに、次の日になると社長はまた七海さんと遊ぶんです」
雨宮「榊、やめろ思い出したくない」
榊「私はあの頃の社長に戻って欲しいだけなんです」
雨宮「5歳の頃に戻れと? ふざけるな」
榊「ふざけてませんよ。若者言葉を借りるなら、大マジってやつです」

雨宮は手で顔を覆い、項垂れた。
どうやら、彼にとって「七海」は思い出したくない記憶のようで――。

榊「自覚をもってください、あなたはドMなんです」
雨宮「なんだと」
榊「花里さんにたっぷり叱られてくださいね、ふふ」
雨宮「(絶句)」


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