雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

陽和「社長!なんですか、あれ!」
雨宮「何って服だ」
陽和「それは分かりますよ! どうしたら、あんなことになるんですか?」
雨宮「クリーニングに出す暇がないから、置いているだけだ」
陽和「置いているだけって……。どれもシワシワで着れませんよ」
雨宮「心配するな、クローゼットに新品のものがまだあったはずだ」
陽和「まさか、1回着ては脱ぎ捨てて常に新しいものを?」
雨宮「へぇ、ひよこのくせに察しがいいな」

誰だって想像つくわ!
つーか、堂々と言うな!
スーツもネクタイもYシャツも、おパ〇ツまで、脱いだら放置するなんて信じられない!
この人、マジで無能だわ。

陽和「あとでクリーニングに出しておきます」
雨宮「あぁ」
陽和「珈琲のおかわりは?」
雨宮「要らない。そろそろ榊が迎えにくる時間だ。でかけるぞ」
陽和「はい、いってらっしゃいませ」
雨宮「何言ってんだ、ひよこも出社するんだぞ」
陽和「え、私もですか?」
雨宮「専属秘書なんだろ? 常に僕と行動を一緒にしないでどうする」

そう言って、雨宮は面倒くさそうな顔をする。
いつの間にかスーツに着替えていて(脱いだTシャツとスエットは例の山の上に積まれている)髪の毛も綺麗に整っている。
ラフな姿でも十分にイケメンだけど、スーツ姿だとオーラがプラスされていてカッコいい。
雨宮のギャップに圧倒されていると。

雨宮「あぁ、念のために釘をさしておくけど。僕のことを好きになるなよ」
陽和「それはどういう意味で……」
雨宮「恋愛対象としてってこと。女は金を持っている男に弱いだろ?でもあいにく僕は女と付き合う暇もなければ、面倒ごとに巻き込まれる気力もないんだ。だから、」
陽和「ご心配なく!」

雨宮の言葉を遮り、陽和は彼をひと睨みする。

陽和「私も家族を養うのに必死で恋愛している余裕はありませんし、社長には仕事だから仕えているだけで興味ありませんので、勘違いしないでくださいね!!」

頭から湯気をだしながら、先に家を出る陽和。
その後で、雨宮は思わず吹き出す。

雨宮「(変なやつ……)」
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