雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

〇AMAMIYA FOODS本社(朝)

雨宮の後に続き出社する陽和。
仕事をする手をとめて、雨宮に挨拶をする社員に向かい、同じように挨拶をする。
秘書室の奥、全面ガラスの張りで作られた社長室に入っていく雨宮の姿を見届けた陽和は、自分の席についた。
(ちなみに榊は雨宮の運転手兼秘書で、雨宮とは別の個室を持っている)

~陽和の心の声~

専属秘書の仕事にも少しづつ慣れてきました。
といっても、私の仕事は社長を見守ることで声がかからない限りこれといってすることはありません。
電話番と(これは緊張する)
秘書課の社員さんたちから回ってくる雑務と(書類の整理やコピー)
掃除・植木の水やり・ごみ捨て・他課へのおつかい
それから社長の飲み物や、食べ物の準備。

イレギュラーで来客時のお茶出しや、お土産を買いに行くこともありますが、基本的には暇です。
みなさん忙しそうに働いているのに、私1人こんなんでいいのでしょうか……?

陽和「(というか、今日はデスクワークが多いなぁ。いつもは出かけること多いのに)」

そう思いながら陽和は雨宮の姿をチラッと見る。
雨宮が外出するときは、陽和も同行することになっており、じっとしていることが苦手な陽和は気分転換になるのだ。
――すると、願いが届いたのか。
電話片手にパソコンを操作していた雨宮は、急に立ち上がり椅子の背もたれにかけてあったスーツの上着を手にとった。

雨宮「まるびし商会で問題が発生した。でかけるぞ、花里……」

そこまで言いかけた雨宮は「いや」と首を降り、眼鏡の男性に声を掛けた。

雨宮「大西、一緒に来てくれ」
大西「はい」
雨宮「あと、米山も」
米山「すぐ用意します」
雨宮「持山は大至急まるびし商会のデータをまとめてPCに送ってくれ。帰り次第、会議をするそ。いいな、伊藤、立花」
持山・伊藤・立花「はい!」

一気に慌ただしくなるオフィス。
結局、夕方になっても雨宮たちが戻ってくることはなく、陽和は榊の指示によって家に帰された。

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