雨宮社長の専属秘書は気苦労が絶えません

その後、陽和は会場に戻り雨宮に言われた通り「匠もいつの間にか大人になったなぁ~」とシャンパン片手にしんみりしていると。

雨宮「どうだ、味のチェックは済んだか?」
陽和「あっ、遅いですよぉ、どこ行ってたんですか!」
雨宮「ちょっと厨房にな……って、ひよこ、お前、酔ってるのか?」
陽和「酔ってないですよぉ、ちょっとしんみりしちゃっただけです。子供が巣立っていくって寂しいもんですよぉ。あんな奴はみとめーん!って言いたいけど、言えないというか」
雨宮「娘を嫁に出す父親かよ、何杯目のシャンパンだ? 飲み過ぎだ」

そういって雨宮は陽和の手からシャンパンを取り、残りを飲み干した。

陽和「あー、私のシャンパーニュ」
雨宮「無駄に発音良く言ってもだめだ。ほら、帰るぞ」
陽和「え、もうですか? まだ全部の料理を食べてないですううう」
雨宮「あぁ、あれな。さっき厨房に行って、確かめたら半年ほど前から別の商品に変えていたそうだ。料理長に問い詰めたらそう吐いた」
陽和「それって」
雨宮「もちろん規約違反だ。よく気が付いたな」
陽和「気が付きますよ、普通……」
雨宮「まさかこんな近くに有能な人材がいたとはな」
陽和「有能? 私が?」
雨宮「あぁ、ひよこは僕のスーパー秘書になれそうだ」

陽和の耳元でそう囁く雨宮。
雨宮のとろけるような甘い笑顔に(陽和フィルター)、陽和の目もキラキラになる。
ぽわんとした意識の中、自分にも役に立てそうなことが見つかったと独りガッツポーズをする。

雨宮「こら、ここで寝るな」
陽和「私、社長には本当に感謝しています」
雨宮「そうだな、感謝しろよ」
陽和「ハイ!明日からスーパー秘書として尽くしますからご期待くださいー」
雨宮「いや、普通でいいから。寝るな、ここで!」


〇雨宮のマンション(朝)

微かな頭痛を感じ目をさました陽和は、寝返りを打つ。
喉が渇いた……、体がだるい。
鳥のさえずりが聞こえる。
もう起きないといけない時間? 
そういや、昨日、ご飯のセットしたっけ?

薄っすら目を開ける。
見慣れない景色、???と思い、もう一度寝返りを打つ……目の前で眠る人物を見て飛び起きた。
雨宮社長!? え? どういうこと!?!?
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