大嫌い、だから恋人になる
「さっきのジュースおごりじゃないからな、勘違いするなよ」

「ケチ、彼女にジュース位おごっても良いでしょ」

「本物の彼女ならな」

「はいはい」

私たちはこうやって時々二人で放課後に逢う。

場所は学校の図書舘。

近くにとても綺麗で大きな市の図書館が出来てから、生徒はみんなそっちに行く。

だからわざわざ学校の図書館に来る生徒は居ない。

二人きりで逢うにはちょうど良い場所。

うちの学校は校舎は新しいけど、図書館は古いまま。

木の床が歩く度に小さな音を立てる。

本は最近の物は殆ど無くて、昭和の頃の古い本ばっかり。

勉強机には何年も前の生徒が彫ったのかわからない落書きがいっぱいある。

一応、パソコンで貸し出しの管理はしてるけど、どの本にも昔使ってた手書きの貸しカードがある。

図書委員もカウンターに居ないことがある位で本当に静か。良く言えばレトロ、悪く言えばボロい。

「そう言えばもう時期テストだけど勉強してる?」

「まあ、ぼちぼちかな。そっちは?」

「私もぼちぼちかな。じゃあ私、今からテスト勉強するけど、秋山君はどうする?」

「じゃあ、俺も少しやって置くかな」

良し、と私は思った。秋山君が勉強してるのを、私は見たことがない。本人に聞いたら、勉強は苦手って話。

ここは私が良い所を見せるチャンス。私も勉強は苦手だけど、今回は凜ちゃんに付き合って貰って予習している。秋山君に優しく勉強を教えたら、秋山君だって私を見直すに違いない。
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