大嫌い、だから恋人になる
明日、出発だと思うと、流石に緊張して眠れなかった。

目をつぶるとちひろの面影がよみがえってきた。

もうこれで逢うことも無くなるだろうと思うと、やっぱり寂しさはあった。俺は起き上がると、スマホを手に取って、ちひろの連絡先を消去した。これで最後の絆も切れたわけだ。

結局、寝付けたのは朝方だった。

出発の朝は快晴だった。

「それじゃあ、行って来るよ」

と俺はキャリーバッグを手にして言った。

「気を付けてね。ごめんなさいね。空港に行けなくて」

母さんが言った。

「大丈夫だよ。二人とも仕事だろ。心配ないから」

「パスポートは持った?」

「大丈夫だって。問題ない。じゃあ、時間が無いから行くよ」

俺は母さんに別れを告げてタクシーに乗った。
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