大嫌い、だから恋人になる
今日の授業は源氏物語。

この話、大嫌い。

きっと源氏は秋山君みたいな超絶イケメンの女たらしなんだ。

色々な女の子をひたすら口説き廻ってる様な男の話しなんてバカみたい。

私がこの時代に生きてたら、こんな男、絶対に振ってやるんだ。

「千川、千川ちひろ、おーい。聞いてるか。聞いてたら教科書20ページ目から読んでくれ」

「ちひろ、ちひろ」

後ろの席の凜ちゃんに背なかツンツンされて、ようやく先生に呼ばれてるのに気付いた。

なっちゃんはクスクス笑ってる。

「すいません。えっと」

「ちゃんと聞いてろよ。この辺テスト出るからな」

「はい」

ふと見ると秋山君がバカにした表情でこっちを見た。もう本当に最悪。

授業が終わるとなっちゃんが話しかけてきた。

「ちーちゃん、どうしたの?もしかして好き人のこと考えてボーッとしてたの?」

「逆、大嫌いな人のこと考えてた」

「誰のこと?」

と凜ちゃん

「それは秘密。」

でも私が秋山君のこと好きでも嫌いでも、秋山君にとってはどうでもいいんだろうな。

だって私は普通の女の子。

顔も性格も。身長は150ちょっとで、直ぐに皆から隠れちゃう。

だから全然目立たない。

目立つことがあってもさっきみたいなこと。

凜ちゃんは頭良くて、なっちゃんは凄く元気で明るい、二人ともクラスの人気者。

私だけが平凡。

だから秋山君と私の接点なんてクラスメイトってだけ。

多分、一度も話さず、秋山君にとっては顔と名前が一致しないままお別れのクラスメイト。

この時までそう思ってた。
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