仁瀬くんは壊れてる
 夏休み明けに学園祭がある。
 その計画を、今日のLHRで立てるらしい。

 うちのクラスは、実行委員がジャンケンで優勝したとかで競争率の高い模擬店を勝ち取った。

「花、なにしたい?」
「自宅待機」
「やめなさい」
「沙羅は?」
「うち〜? 女装カフェ!」

 ちょっとなに言ってるかわからない。

「ほら。うちの特技って、整形メイクじゃん?」

 それ頷いていいの?
 たしかに沙羅、遅刻しかけてノーメイクできたとき誰かわからなかったけど。

「男子をオネエに大変身させる」
「……需要あるの?」
「キャッチコピーは、インスタ映えするオネエとタピオカ。これで行列間違いなし!!」

 タピオカはともかくオネエを晒してやるなよ。

「タピオカは、売れそうだね。利益も出しやすい」
「そうなの?」

 利益考えずに立案したの?

「ただ。他のクラスと被りそうだから、他にもいくつか出しておいたほうがいい。どれになっても妥協できそうなものを」
「花って……」
「なに」
「リーダー向いてるよね」
「こんな無気力なリーダーいらないでしょ」
「ううん。言ってることわかりやすいし、冷静だし。無駄がないというか」

 無駄がないのは省エネゆえだ。

「頭もいいよね」
「……いや。普通」
「頭いいといえば。仁瀬くん!」

 沙羅は、相変わらず仁瀬巧に夢中だ。
 近づくことこそしていないが、

「デートしてくれないかな。一回だけでも」

 大勢の中の一人でいいから近づきたいみたいなことを言っている。
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