My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
(どんな人が助けてくれるんだろう)

 こんな陰湿な場所で一人ただ待っているのも気が滅入る。私はその人物を勝手に想像してみることにした。

(男の人? それとも、意表を突いて女の人? ……怖い人だったら嫌だな。エルネストさんみたいに優しそうな人だといいなぁ)

「銀のセイレーン、聞こえるか?」
「!?」

 唐突に頭上から降ってきたその無遠慮な声に、私は思わず悲鳴を上げそうになってしまった。

 例の天井近くの小窓からのようだ。私は立ち上がり天井を見上げる。
 ここは地下。おそらくあの窓は地上に通じている。ということは外にいる誰かの声だ。
 しかしその窓は小さすぎてここからは何も確認出来なかった。
 そろそろ外も暗くなる時間だろう。そういえばここに入ってきた時よりも肌に触れる空気が冷たくなった気がする。
 壁に取り付けられた蝋燭がゆらゆらと揺らめいて、目を凝らしてもやはり何も見えなかった。

「おい。誰もいないのか?」

 再び小窓から聞こえた、先ほどより少しイラついた声。

「はい、います!」

 答えてから声が大き過ぎたかと慌てて口を塞ぐ。

「今相棒をそっちにやる。扉が開いたときを狙ってそこから逃げろ」

(相棒?)

 あの小さな窓からどうやって入ってくるというのだろう。
 喋り方からして男の人らしいが、その声はまるで変声期前の子供のようだった。
 反響しているせいだろうか……。

 訝しんでいると、何か小さなものがゆっくりと落ちてきた。
 いや、“落ちて”きているのではない。
 ふわふわと目の前まで“降りて”来たそれに、私は目を丸くした。
 白い毛玉のような小さな体と、体の割に大きな黒い翼。そして小さなつぶらな瞳と、特徴的な豚鼻。


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