My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1


 テントに戻った私たちはそれからすぐに幕で仕切られた寝室で横になった。
 長旅で身体は疲れていたけれど、今寝るわけにはいかない。
 私はすぐ隣でライゼちゃんとセリーンが眠ったのを確認し、そっと起き出した。

 テントを出て辺りを見回すと近くの木を背に胡坐を掻く彼の姿を発見した。
 彼――ラグもこちらに気づき億劫そうに立ち上がる。
 彼は私と同じくヴィルトさんの物と思わしき少し大きめの服を着ていた。
 いつも比較的厚着な姿を見ているせいか、その涼しげな格好になんとなく違和感を覚えた。
 走って側まで行くと、普段は隠れている腕や胸元が意外とがっしりと逞しいことに気づく。

(じゃなきゃ、あんなふうに闘えないか)

 ふとモンスターや野盗たちと闘う彼を思い出しながら、いつにも増して不機嫌そうなその顔を見上げた。

「もしかして、そっち皆寝るの早かった?」
「あぁ、あのオヤジは家入ってすぐにぶっ倒れちまうし、あのガキもオレが戻ったときにはもう寝てやがった」

 それを聞いて慌てる。
 ということは、相当待たせてしまったことになる。

「ご、ごめんね! こっちは二人ともなかなか寝てくれなくって」
「で? 何だよ。用は」

 私の言い訳を遮るように言うラグ。
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