My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1


 藁を編んだ敷物の中央に料理が並べられていた。
 私達はライゼちゃんに促されその料理を囲むように腰を下ろす。
 クレープのようなパリパリの薄い生地と、魚のすり身らしきもの、生野菜がそれぞれの器に乗せられていた。
 見様見真似でまだ温かいその薄生地に魚のすり身と野菜を挟み、独特な香りのあるソースを付けて口に入れる。

「美味しい!」
「ん、美味いな」
「お口に合って良かったです」
「いつもライゼちゃんこうやって自分で料理してるの?」
「はい」

 にっこりと頷くライゼちゃん。
 目の前の料理を改めて見下ろして、私はほぉと息をつく。

(私中学の頃、料理なんてほとんどしたことなかったなぁ……。今もだけど)

 そんな自分がなんだか恥ずかしく思えた。
 私は続けて訊く。

「ヴィルトさんとラウト君は? ご飯どうしてるの?」
「多分、そろそろ……」

 と、丁度そのときだった。

「姉ちゃんおはよー! お腹減ったー!!」

 外から聞こえてきたその大声に、ライゼちゃんは恥ずかしそうに苦笑した。



 料理を持ってテントを出たライゼちゃんは、そのまま外でラウト君と何か話をしているようだった。
 私は口に残っていた料理を飲み込んで立ち上がり、テントの入り口から顔を出す。

「おはよう、ラウト君」

 声を掛けるとラウト君はすぐさま飛び切りの笑顔をくれた。

「お姉さん、おはよう!」
「おはようございます、でしょう? もう」

 注意するライゼちゃんに小さく笑って、訊く。

「ヴィルトさんの具合はどう?」

 昨夜は家に入ってすぐに寝てしまったとラグが言っていた。大丈夫なのだろうか?

「まだ、寝ているようです。後で、私も見に行ってみようと思います」
「そっか……心配だね。あ、ラグは? もう起きてる?」
「うん! 起きてるよ! あちーあちーってずっと言ってる」

 それを聞いて、即不機嫌そうなラグの顔が頭に浮かぶ。

「……ラウト君、ラグ、怖くない?」
「え? 全然怖くないよ。何で?」

 あっけらかんと言われて、私は答えに詰まってしまった。

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