My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 顔を上げ、きょとんと私を見るブライト君。

「ほら、ファルシェのこと。私あの時頭の中真っ白になっちゃって、ブライト君が言ってくれなかったら、多分あのまま失敗してたと思う。だから、ありがとう!」

 私も彼と同じように頭を下げてお礼を言う。
 すると今度慌てたのは彼の方だった。

「いえ、そんな! 顔をお上げください! 私は、ただ思いついたことを言っただけでして、そんな、お礼を言われるようなことは決して……!」
「ううん、ブライト君のおかげ。私、みんなと歌えて本当に楽しかったんだ。だから私の方こそ、みんなにお礼を言いたいくらい。ライゼちゃんにもね」

 ライゼちゃんの名を出したところで、ブライト君の表情が変化する。
 眩しそうに瞳を細め、彼はテントの方に視線を送った。

「ライゼ様の笑顔を見たのも、久し振りでした」

 その優しげな瞳に、つい悪戯心に火がついてしまった。

「ライゼちゃんの笑顔って、とっても可愛いもんね」
「はい。……!? い、いえ、その」

 私の視線に気付いてブライト君の声が裏返る。
 暗くてわからないが、きっとその顔は赤く染まっているのだろう。
 思わず顔が綻んでしまう。

「ブライト君て、本当にライゼちゃんのことが、大事なんだね」

 ――好きなんだね、と喉元まで出かかったけれど、流石にそれは言えなかった。
 ブライト君は明らかにホっとした様子で小さく頷いた。

「はい」

(……あれ?)

 ふと疑問に思う。

「久し振りって、ライゼちゃんいつも笑顔だよね?」

 ブライト君の顔が悲しげに曇る。

「ライゼ様の本当の笑顔は、フェルネ様が亡くなられた日から殆ど見ることはなくなってしまいました」
「フェルネ、様?」
「ライゼ様の、お母様です」
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