My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1
でも彼はさっさと話を進めようとする。
「で、まさか船で帰れなんて言わないよな」
「はい、勿論です。ビアンカにまた飛んでもらえるよう頼むつもりです」
そうライゼちゃんの口から言ってもらえて少しほっとする。だが彼女は申し訳なさそうに続けた。
「ただ、私はもうここを離れるわけにいきません。父にもこれからやって欲しいことがたくさんありますし……」
「あ、そうだよね。あの農園のことがあるし、これから大変だもんね」
「僕がいくよ!」
そう大きな声を上げたのはラウト君だ。でも、
「何言ってるのラウト。あなたが一人で行ったら逆に皆さんのご迷惑になってしまうわ」
すぐにそうお姉ちゃんに言われてしまい、肩を落とした。
「それに、ラウトにもやってもらいたいことがあるのよ」
「え?」
「ブライトが自由に動けない間、ベレーベントの様子を私に伝える役をお願いしたいの」
「ライゼ様!?」
ラウト君が答えるより早く、焦ったような声を上げたのはブライト君だ。
「そんな! ラウト様に私の代わりなど……! 私ならすぐにでも元のように」
「ブライト、さっき言ったことを忘れたの?」
「いや、その、しかし……」
「ラウト、お願いできるかしら?」
もう一度訊かれ、ラウト君は戸惑ったように小さく言った。
「村へ行ってもいいってこと?」
「えぇ。でもカルダがいなくなったとは言え、危険なことに変わりはないわ。十分に注意するのよ」
真剣に頷くラウト君。
「それともう一つ。クラール君の様子も一緒に伝えてくれると嬉しいわ」
友達の名前にラウト君の顔がみるみる明るくなる。
「うん!! 僕頑張るよ!」
それを聞いたライゼちゃんはとても満足げに微笑んだ。