My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 それから間もなくして陽が沈み、今日はその場で野宿ということになった。

 夜活発になるモンスターがいるため暗くなったらなるべく動かない方がいいのだそうだ。
 その分明日は陽が昇ったらすぐに出発。
 ついこの間までの日常からは考えられない生活スタイルだ。
 でもきっとこの世界ではこれが常識。
 いつまでこのレヴールにいるかわからないが、私もそれに慣れていかなくてはならないだろう。

(地面で寝るっていうのも、慣れなきゃなぁ……)

 私は足元の土を何とはなしに踵で弄りながら溜息をつく。
 野宿なんて、勿論初めての体験だ。
 幸い今この世界は過ごしやすい春のような陽気。陽が沈んでも昼間に比べて少し肌寒い程度だ。

 ふと空を見上げると地球と変わらない月と、無数の星達が煌いていた。
 灯りは無くても、その優しい光のお陰で前にいる相手の表情くらいは確認できた。

 ラグは無事元の姿に戻り、セリーンも今は元のクールな彼女に戻っている。
 ただ先ほどから自分を見ては大きく溜息を漏らす彼女に、私の向かいに座るラグのこめかみ辺りがピクピクと痙攣するのが見てとれた。

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