偽婚
「まぁ、いいじゃん。どんな結果になったって、私がいるしさ。老後はふたりで寂しく、仲よく暮らそうよ」

「梨乃ぉ」


どんな慰め方なんだか。

だけど、それ以上に心強い言葉はない。


やっぱり持つべきものは、幼馴染の大親友だ。



「愛してるよぉ、梨乃ぉ」

「はいはい。わかったから、居酒屋で酔っ払って泣かないで。みんな見てるから。ね? ほら、涙を拭いてくだちゃいねー?」


梨乃はまるで子供をあやすみたいに言いながら、私におしぼりを差し出した。


泣きすぎた末に、やっと気付いた。

私は、自分が思うよりずっと、限界だったらしい、と。



さんざん、騒いでから、少し落ち着いて、私は深呼吸をした。



「ねぇ、梨乃。私、やっぱりちゃんと、神藤さんと話してみるよ」

「うん」

「今はまだ何を言えばいいかもわからないし、好きって伝えるかどうかも迷ってるけど、それでも話さなきゃいけないと思う」


もしそれで、最悪の結果になったとしても、今のまま、お互いに距離を取ったままの関係を続けるよりは、ずっといいから。


決意を持って、首元のネックレスを握る。

私の答えに、梨乃は「そうだね」と、優しくうなづいてくれた。

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