偽婚
誕生日のあの日、私は神藤さんに気持ちを伝えて、それでこの関係が終わるのなら、それも仕方がないだろうと思っていた。

けれど、あの事故だ。


私に罪悪感があるからなのか、見舞いにくる神藤さんはいつも信じられないくらいに優しくて、それが嬉しい反面、戸惑いもあった。



「あー、神藤さんが帰ってくるのが怖い」


思わず頭を抱えてしまった私を見て、梨乃は少し首をひねったあと、言った。



「だったら、今夜は、みんなで杏奈の退院パーティーしない?」

「……退院パーティー?」

「杏奈と私と、神藤さん。それから高峰さんも呼んで、ぱーっと騒げば、きっと不安も消えるはずだよ」


即座に私の心の内を見抜いた梨乃。

思わず泣きそうになってしまうが。



「え? 高峰さんも?」

「だって私だけ部外者なのも嫌だし」


そう言った梨乃は、すぐに携帯を取り出し、操作する。



「もしもーし。私。あのさ、今日、神藤さんの家で、杏奈の退院パーティーするんだけど、高峰さんもおいでよ。あ、マジで? ありがとー。じゃあ、またあとで」


いつの間に、そこまで高峰さんと仲よくなっていたのか。

驚いてあんぐりと口を開く私に、梨乃は「ビール持ってきてくれるって」と、無邪気に喜ぶ。


どこから突っ込めばいいのかわからないので、今は追及を諦め、とにかく今夜はふたりきりじゃないことに、私はほっと胸を撫で下ろした。

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