偽婚
「まぁ、もういいじゃないの。柾斗もここまで言っているんだし。それに、明日どうなるかなんて誰にもわからないんだから、だったら毎日を幸せに生きた方がいいに決まっているわ」
なかなか話のわかるお母様だ。
お母様に説得された形で、お父様も、諦め混じりの息を吐いた。
「それで? 式はどうするんだ? もう決めているのか?」
「結婚式をするつもりはありません」
「何?」
一瞬、和らいだ空気が、またすぐに不穏なものになってしまった。
「神藤の息子が、結婚したのに式もしないなんて」
「彼女の両親はすでに他界していますし、僕も派手なことは好みません。それより日々の生活を楽しもうと、ふたりで決めました」
また神藤さんは、はっきり言った。
「まぁ」と口元を押さえたのは、お母様。
「杏奈さん、ご両親がいらっしゃらないの? それは寂しいわね」
「いえ、今は柾斗さんが私の家族ですから、寂しくはありません。それに、柾斗さんのご両親は、私の両親だと思っています。だから、結婚して、こんなにたくさんの家族ができて、私はすごく幸せです」
私も背筋を正し、神藤さんと同じように、はっきりと返した。
お母様は少し驚いて、でも次にはふっと笑顔を向けてくれた。
「結婚というのは、ふたりで支え合いながら生きていくということですものね」
なかなか話のわかるお母様だ。
お母様に説得された形で、お父様も、諦め混じりの息を吐いた。
「それで? 式はどうするんだ? もう決めているのか?」
「結婚式をするつもりはありません」
「何?」
一瞬、和らいだ空気が、またすぐに不穏なものになってしまった。
「神藤の息子が、結婚したのに式もしないなんて」
「彼女の両親はすでに他界していますし、僕も派手なことは好みません。それより日々の生活を楽しもうと、ふたりで決めました」
また神藤さんは、はっきり言った。
「まぁ」と口元を押さえたのは、お母様。
「杏奈さん、ご両親がいらっしゃらないの? それは寂しいわね」
「いえ、今は柾斗さんが私の家族ですから、寂しくはありません。それに、柾斗さんのご両親は、私の両親だと思っています。だから、結婚して、こんなにたくさんの家族ができて、私はすごく幸せです」
私も背筋を正し、神藤さんと同じように、はっきりと返した。
お母様は少し驚いて、でも次にはふっと笑顔を向けてくれた。
「結婚というのは、ふたりで支え合いながら生きていくということですものね」