加納欄の受難 シリーズ1 シーズン1
 それを田崎が割って入って止める。

「大山さん。いかにあなたでも、社長の商談中は誰も入れないことになってるんですよ。それとも令状でもお持ちなんですか?」

「そんなこと言って、いないんじゃないのか?」

 大山先輩が田崎の目を見る。

「中国からの大切なお客さんと商談してるんですよ」

 田崎は言った後に、一瞬シマッタというバツの悪そうな顔をしたがすぐに表情を戻した。

「中国と取引してるのか。そりゃ何かと盛大だな」

「まぁ、今は何を作るにも中国産がほとんどですからね。向こうと交流を持ってると会社は助かりますよ」

 田崎はハハハと笑った。

「・・・欄、帰るぞ」

 大山先輩が突然言った。

「はい」

 あたしは、ねじ伏せていた男の手を放し立ち上がった。



大山先輩が、諦めるっていうことは、ここにはとりあえず高遠先輩はいないって判断?



 大山先輩がまたサングラスをして扉に歩いて行った。

「あぁ、大山さん。今日は高遠さんは一緒じゃないんですか?最近会社の周りでよく見掛けましたけど」

 大山先輩の足の動きが止まった。

 さらに田崎が続ける。

「何もないところを探していても何も出ないですよ。と、伝えておいて下さい」



ナニモナイ トコロヲ サガシテモ ナニモデナイ。



・・・出ない(-.-)?



 あたしはチラッと田崎を見た。

 大山先輩はツカツカと田崎の所まで戻ると、田崎の胸ぐらをつかんで。

「てめぇ、タカに何しやがった」

 と、言った。

 田崎は少し苦しそうに。

「大山さん。何を言ってるんです。私は伝言しただけですよ」

 と言った。

「タカに何かしてみろ。お前らブタ箱行きじゃすまないからな」

 そういうと大山先輩は部屋を出て行った。

 あたしも、部屋を出ようとした時に、田崎が話しかけてきた。

「お嬢さん。麟孔明(リンコウメイ)という名前に聞き覚えは?」


 ドキッ!


 と、あたしの心臓が高鳴った。

 動きも一瞬ビクッととまり、目だけが田崎の姿をとらえた。

「知らない」

 それだけ言って大山先輩の後を追った。

 ドキドキしていた。



まさか、突然、師範の名前が出てくるなんて・・・。


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