Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
そんなトラブルから数日が経った。季節外れの嵐があったなんて、嘘のように思える秋晴れの日。


私は自宅の最寄り駅で、小笠原さんの来るのを待っていた。いよいよ今日はドライブ。


「3回目のデートは1つの節目。」
「クルマという密室で1日ほぼ2人きり。」


先日の美里に言われた言葉が頭の中で、クローズアップされ、私の緊張は高まっていた。


いろいろと、とりとめのないことを考えながら、立っていた私の前に、スッと1台のクルマが止まる。ハッとして、そのクルマを見ると


「おはよう、石原。」


と爽やかな笑顔の小笠原さんが、降り立つ。


「おはようございます。」


「待たせちゃったか?」


「そんなことありません、大丈夫です。」


「じゃ、乗って。」


「はい、失礼します。」


中に乗り込むと、キレイな車内。きちんと手入れされてるなぁと感じさせられる。


「朝ご飯、食べた?」


「はい。」


「じゃ、出発しよう。」


「お願いします。」


私のその声で、小笠原さんはクルマをスタートさせる。


「素敵なクルマですね。」


「ありがとう、初めてなんだ。」


「えっ?」


「このクルマになってから、グループで出掛けて、友達の女子を乗せたことはあるけど、こうやって女の子と2人でっていうのは。」


「小笠原さん・・・。」


「だからちょっと緊張してる・・・柄にもなく。なんて言わない方がいいか。みっともねぇもんな。」


「そんなこと、ないです。」


「そうか、石原は優しいな。」


「・・・。」


「音楽、好きなの掛けてよ。お前がいつも聞いてるようなのが入ってるといいけど。」


そんな会話を交わしながら、クルマは街中を走って行く。
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