Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
「正直言って、人と話すこと、接することが苦手のまま、ここまで来てしまいました。こういう席に出ることも、これからは、あまりないと思います。」


あまりのあけすけな、澤城くんの言葉に、座は水を打ったように静まってしまう。


「ですが、こと仕事に関しては、その面でご迷惑はお掛けしないつもりです。扱いにくい奴かもしれませんが、どうかそういう奴なんだというつもりで、お取り扱い下さい。」


そんなことを堂々と言ってのけた彼に、呆気にとられた形のみんなからは、なんの質問も出ず、彼のコーナー(?)はあっさり終了。


すっかり白けてしまった座を、最後の女子がなんとか盛り上げてくれて、そのまま本格的な飲みに入った。


当初は杯のやり取りはあったものの、コミュ障を公言した澤城くんの周りからは、まもなく人が消え、待っていた機会はあっさりと巡って来た。


ところが、今度は私の方が、いろいろな人に捕まり、彼の側に行けないでヤキモキする時間が続いたが、それもようやく途切れたと思った時だ。


「ちょっと、あんた!」


大きな声にビックリして、その方を見ると、赤い顔をした千尋が、澤城くんの前に仁王立ちしている。


(えっ?)


私は慌てて、立ち上がった。
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