Only you〜伝えたかった、たったひとつのこと〜
それから数日後、登校した俺の下駄箱に、1通の手紙が入っていた。


(来たな!)


瞬間、俺はそう思った。悪魔達はついに、俺をターゲットに選んだのだ。俺は、血が逆流するのを覚えた。


差出人を見ようと、怒りで震える手で、手紙を裏返した俺は、そこに書かれていた名前を見て愕然とした。


そこには、1学期に隣で見たことある筆跡で「石原梓」と書かれていたからだ。


(石原、なんでお前が・・・。)


ショックだった。石原がそんなことをする子だとは、思ってもみなかった。


だけど、俺と翔真と同じように、石原と小川も幼稚園以来の仲だと聞いたことがある。ヤンチャな小川と、おとなしい石原と、性格は正反対に見えるが、アイツらはいつもつるんでいる。


(石原も同じ穴のムジナか。許せねぇ・・・。)


俺の中の石原のイメージが、ガタガタと崩れ、俺はもう、アイツに嫌悪感しか抱けなくなっていた。


翌日、給食を食べ終えた俺のもとに、小川がツカツカと近寄って来た。


「ちょっと、あんた!」


「なんだよ。」


俺は静かに、小川を見た。


「昨日、なんで来なかったのよ。下駄箱に手紙、入ってたでしょ?」


「美里、もういいよ。」


俺に詰め寄る小川の後ろで、袖を引っ張るようにたしなめる石原。そんな2人を少し眺めたあと、俺はおもむろに、カバンから手紙を取り出した。


「手紙ってのは、これのことか?」


「ちょっと、あんた。封もあけてないの?」


その小川の台詞に、俺の中で、何かがブチッと切れる音がした。
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