私の中におっさん(魔王)がいる。
「なんだろうな?」

 首を捻ったのは雪村で、花野井も同様に顎に手を当てて眉を八の字に曲げる。
 風間も微苦笑しながら腕を組んだが、黒田は胡乱気に彼を見た。そして、毛利に話を振る。

「ねえ、なんだと思う? 毛利さん」

 あたりはついてるんだろ。と、内心で挑発する。それを感じ取った毛利は、不快さを感じながら口にした。

「おそらくは、その空間こそが魔王そのものだろう。あのとき、男の死体は消えた。肉体ごと魔王に吸収されたと考えられる。その男に会ったと小娘が言うならば、白い空間こそが魔王である可能性が高い。そして、風間」

 突然話を振られたにも関わらず、風間は微動だにせずに微笑んでいた。

「なんでしょう、毛利様」
「我々が儀式のときに見たあの、小さな白銀の太陽のような光の塊こそが魔王なのではないか?」
「……そうなのかも知れません。なにぶん、私も見たことがないもので……」

 申し訳なさそうに顔をゆがめて風間は頭を下げる。

(ふんっ! うさんくさいんだよなぁ。あいかわらず! それにしても、やっぱりあの光の塊が魔王だったんだね)

 黒田は片方の眉を釣り上げた。そして、毛利を一瞥する。

(やっぱ、毛利は気づいてたか。ほ~んと、食えないんだから)

「しかし、風間よ。大した演技力だな」
「……は?」

 風間は一瞬、笑みを崩す。ぴりっとした緊張を毛利含め、黒田と花野井も見逃さなかった。

「申し訳ございません。不肖故、意味が図りかねます」
「あの小娘を帰す方法はあるだろう」
「……一体、どうやって?」

 風間は初めて笑むのを止めた。柔和な表情を真剣な顔つきに変える。

「俺達がまた儀式を行えばいい」

 風間は強い瞳で毛利を見据える。

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