midday crow
一番最初に気づいたのは太陽だったのだろう。

気力も体力も、全て捧げる勢いなのは全員同じだったが、中盤、太陽の歌い方が変わった。

どこかにいる誰か、ではなく、特定の誰かに向けて、歌い始めたように聴こえた。

熱量が違う。込められる気持ちが違う。

溢れそうに燃え立つような。

──それで紅羽も視界に捉えた。

四月以来に見るその顔、阿鳥光輝の姿を。

わかった瞬間キーボードに両手を叩きつけていた。

爆発した感情は、音になって飛び出す。

矛盾する気持ちも全部、渦を巻いて──そして、メンバーみんなの音が、絡まって、曲になって、光輝に向かって一直線に。

翔んでいく。

四人同時に楽器を鳴らし、“コア”が終わった。

万雷の拍手の中で、なぜか光輝の表情がよく見える。

とても──幸せそうに見えた。
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