冬の王子様の想い人
「でもね、ある日を境にものすごく生き生きした明るい表情をするようになったの。大切な女の子ができたから自分を磨くんだって、何事にも前向きに取り組むようになったの」

ナツさんのことを言っているのだとすぐにわかった。


「あの子は今までとんでもなくモテてきたけれど、こんなにひとりの女の子を大事にしている姿は初めて見たわ。あなたを抱えているのを見て本当に驚いたの」
「え……?」

思わず顔を上げて先生を見つめる。


「あんなに優しい表情ができるんだって初めて知ったわ。愛しくて大切で仕方ないって目でずっとあなたの眠っている姿を見て、手を握ってた。その仕草に見ているこっちが切なくなるくらいにね。原口さんはきっとあの子が守りたい唯一の女の子なのね」

穏やかに紡がれた言葉が胸に沁みこんでいく。胸の中に想いが溢れそうになって鼻の奥がツンとした。


……ああ、もうどうしてあの完璧な恋人はこんなにも私を翻弄するのだろう。


「だから、氷室くんの気持ちを信じてあげてね」

その言葉に頷くしかできなかった。

声を出したらみっともなく泣き出してしまいそうだ。


ねえ、雪華。
私はナツさんではないけど、あなたを想う気持ちは誰にも負けないから。
あなたが向けてくれる気持ちをもう疑ったり勝手に不安になったりしない。
あなたをなによりも大切にしたい。


心の中で固く誓った。
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