冬の王子様の想い人
夏休みが始まった。

普通科の私たちには特進科のような授業はない。ただ、さすがに高校二年生の夏となると周囲は少しずつ受験を考え、意識しだしている。


そのため、八月に入ったら近所の塾の夏期講習会に梨乃と通う約束をしている。

雪華も一緒に通いたがったのだけど、成績の差が激しすぎる。彼は理系クラスで、文系の私とは選択科目も違う。
その説明を何度しても不服そうだった。

夏休み中、図書室は自習室代わりの利用が可能なので、講習会の前に少しは宿題を終わらせて勉強しよう、と梨乃と計画していた。


「今日も暑いわねえ」

夏休みに入って一週間近くが経った七月末、学校までの道のりを歩きながら親友が言う。


今日は図書室で勉強会の日だ。

雪華とは毎日連絡はしているけれど、終業式の日から会えていない。

なにか用事があるのか、ここ数日は特に忙しくしているようだった。今日も学校で授業だと言っていた。


午前十時を少し過ぎたばかりだというのに、空には燦燦と明るい太陽が輝いている。

一歩進むたびに額や首筋には汗が滲む。学校まではそれほど距離があるわけではないけれど、日影はほとんどない。

直射日光がむき出しの半袖シャツから見える腕をジリジリ焦がす。
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