冬の王子様の想い人
翌朝、早めに起床して学校に行く準備をする。

いつもの電車より一本早い電車に乗ろうと決めて梨乃にメッセージで伝えた。


昨夜も数回雪華から着信があり、メッセージも幾つか届いていたけれど、その全てに応答する勇気がもてなかった。

急に避けるなんて失礼だし、不快な気持ちにさせてしまうとわかっている。この対応は正しくないと理解している。


自分の意気地の無さにうんざりする。


それでも少しだけひとりで落ち着いて考える時間がほしかった。

心の中で何度も言い訳と謝罪を繰り返してベッドに入ったけれど、眠りはなかなか訪れなかった。


結局答えもでず、気持ちに折り合いなんてつかなかった。


雪華が私を大切に思って大事にしてくれる理由は私が雪が好きで、雪華の名前を好きな友だちだから。


十分に理解している。

ナツさんが現れたらきっと失恋確定だ。あんな極上男子に恋愛感情を抱いてもらえるわけがない。

そもそも梨乃のように美人でも千帆ちゃんのように運動神経がいいわけでもない私に好かれる要素はない。


学校一の王子様と通学を共にしているこの毎日がそもそも非現実的なのだから。

今頃になってそんな現実を思い知るなんて、あの頃の自分の無頓着さを罵りたい。



どうして恋をすると自信がなくなるのだろう。


男子生徒なんて学校中にいるのに、なぜ雪華だけがこんなにも特別で惹かれてしまうんだろう。




なんで手の届かない人に恋をしてしまったんだろう。
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