冬の王子様の想い人
「……行ってきます」
キッチンにいる母に声をかけてマンションの九階にある自宅を出る。
玄関ドアを開けると梅雨の時期らしいどんよりとした灰色の雲が空に広がっていた。
寝不足の頭を無理やり覚醒させ、制バッグの中に折りたたみ傘が入っているのを確認し足を踏み出す。
灰色の空は雪華の綺麗な目を彷彿とさせる。そんな些細な共通点に心を躍らせるなんて私は彼をどれだけ好きなのだろう。
通勤通学の人の姿が目立つ、駅までの大きな通りを歩く。
幾人かの人を追い越し、追い越されながら足を進める。鉛色の空は相変わらず頭上にある。
今日学校に着いたら謝ろう。本当の理由を今は言えないけれど、これ以上心配をかけて失礼な態度もとりたくないし、怒らせたくない。
なにより嫌われたくない。
でも、そもそもなんで昨日あんなに怒っていたのだろう?
やっぱり黙って帰ったから?
小首を傾げて、改札前で定期券を制バッグから取り出す。
「ねえ、見て! すっごいイケメン!」
「うわ、本当、高校生? カッコ良いわねえ」
珍しく女性の甲高い声が朝の駅前に響き、感嘆の声が上がる。
瞬時に頭に浮かんだ人物の姿を慌てて振り払う。
いくらなんでも朝から駅前にいるわけがないよね。恋人でもないし、約束もしていないもの。
ひとりで納得して頷き、足を一歩踏み出した。
キッチンにいる母に声をかけてマンションの九階にある自宅を出る。
玄関ドアを開けると梅雨の時期らしいどんよりとした灰色の雲が空に広がっていた。
寝不足の頭を無理やり覚醒させ、制バッグの中に折りたたみ傘が入っているのを確認し足を踏み出す。
灰色の空は雪華の綺麗な目を彷彿とさせる。そんな些細な共通点に心を躍らせるなんて私は彼をどれだけ好きなのだろう。
通勤通学の人の姿が目立つ、駅までの大きな通りを歩く。
幾人かの人を追い越し、追い越されながら足を進める。鉛色の空は相変わらず頭上にある。
今日学校に着いたら謝ろう。本当の理由を今は言えないけれど、これ以上心配をかけて失礼な態度もとりたくないし、怒らせたくない。
なにより嫌われたくない。
でも、そもそもなんで昨日あんなに怒っていたのだろう?
やっぱり黙って帰ったから?
小首を傾げて、改札前で定期券を制バッグから取り出す。
「ねえ、見て! すっごいイケメン!」
「うわ、本当、高校生? カッコ良いわねえ」
珍しく女性の甲高い声が朝の駅前に響き、感嘆の声が上がる。
瞬時に頭に浮かんだ人物の姿を慌てて振り払う。
いくらなんでも朝から駅前にいるわけがないよね。恋人でもないし、約束もしていないもの。
ひとりで納得して頷き、足を一歩踏み出した。