溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
厚い胸板、肩から鎖骨、鎖骨から顎のラインが妙に色っぽくて危険な男の香りがする。濡れた漆黒の髪から水滴が落ちた。
顔をそらし目のやり場に困る。
「こんなに意識してもらえるなんて、光栄だな」
スッと伸びてきた手が私の髪の毛を下からすくう。髪の毛を触られるのは苦手なのに、不思議なことに嫌な気分にはならなくて、むしろその仕草にドキドキしている私がいる。
篠宮先生といるとペースを乱されてしまう。それも無理にではなく、とても自然に心地よく。まんまとそれに乗っかってる私を、彼はどう思っているのか。
「い、意識してなくても、赤くなりますよ」
そうよ、だってこんな経験は初めてに近いのだから。優のときでさえ、身体を求められはしたけれどこんな場面に遭遇したことはない。
彼は抱き合うときは、いつも服を着てたから。事が済むとさっさと帰って行き、私はいつもそれを寂しく思っていた。
だけどそれは私が遊びの女だったからであって、本命の彼女にはそんなぞんざいな扱いはしていなかったのかなってあとになって思った。
今思えば最低最悪だったともいえる。どうしてもっと早くそのことに気づかなかったんだろう。