溺愛求婚〜エリート外科医の庇護欲を煽ってしまいました〜
「山田さんだけど、内服での痛み止めも処方しておくから、もし痛がる場合は注射と内服を併用してもらって構わない。絶飲食から少量の水分可と指示を変更しておくよ」
廊下を歩きながら、電子タブレット式のカルテを操作している篠宮先生が告げてくる。
綺麗でしなやかな指先で画面をタップして、指示の変更をおこなっているようだ。
もうすぐこちらのカルテにも指示変更内容が飛んでくるだろう。
「それから山田さんは既往にDMがあるから、感染兆候や創部の状態に特に気をつけてくれ」
「はい、わかっています」
「あ、それとメンタル面も気にして観察しておいてくれ」
「はい」
それから何人かの受け持ちの患者さんの回診を終えたあと、同じように指示の変更が電子カルテを通して行われた。
廊下の隅でひと気がないせいか、私は思わず身構えてしまう。さっさと仕事を済ませて戻ろう。
「では、私はこれで」
さっと身を翻し、ナースステーションへ戻るべく歩き出す。
「あ、待って」
そう言って篠宮先生は私の前に回り込んだ。
そして、目が合うとスッと目を細める。内心ドキッとした私は、見透かされないように口元に力を入れた。
立ち居振る舞いが綺麗で、立っているだけなのにオーラがあって人の目を引く。
その雰囲気にのまれてはいけないと何度も誓ったはずなのに、篠宮先生を前にするとそんな決心はすぐに揺らいでしまいそうになる。
「なんでしょうか?」
「なにって、この前のことだよ」