ノワールとブロンシェール

むかしむかし
天族と魔族が争っていました

火種となった原因も過去に忘れ去られたまま、
長く長く続く不毛な争い

互いの生命を消耗していく世界

そんな世界で、2人は出会ったのです


争う理由もないまま、同族の生命が消えていく現実に涙を流す純白の翼持つ女

争いに生命を燃やす同族たちと一緒に武器を手にとる漆黒の羽根を持つ男

違う種族というだけで何を争うのか、なぜ争わなくてはならないのか

種族という枷を外し、2人は互いの夢を語り合いました

争いのない世界を
武器を持たない世界を

そして、語り合った2人は次第に惹かれ合いました


しかし、周りはそれを許しません

2人は互いに高い地位を持つ立場でした
高い魔力を持つ2人
争いのためには必要な力を持つ2人

そんな2人には義務が課せられます

純白の翼を持つ女は同じ白を持つ男と
漆黒の羽根を持つ男は同じ黒を持つ女と
強い力を宿す者を生み出すために

惹かれあった2人にとって、それは辛いことです

そして2人は決意します
2人で共に生きることを

互いの種族が手を取り合い、共存する世界を
その一歩になるために


2人は互いが住む屋敷を抜け出し、約束の木の元へ

落ち合い、微笑み合う2人

これからのことを考え、希望が膨らむ2人にひとつの影がありました

その影は怒りの瞳に涙を流しながら、純白の翼を持つ女に鋭い銀がその身体を突き抜けます

純白の翼を持つ女が鮮血に染まる

漆黒の羽根を持つ男は崩れる純白の翼を持つ女を抱きしめます

高い魔力を持つ2人には分かるのです
純白の女を貫いた銀が呪いを持っていることを
その呪いのせいで、純白の女が回復できないことを

純白の女の生命が消えていく時間を逃さないように強く抱く漆黒の男

短い時間のなかで、2人は約束します

純白の翼を持つ女は言います
いつか貴方の元へ必ず帰ることを

漆黒の羽根を持つ男は言います
いつか貴女と共になる世界を作ることを