シンはサミットに暮らしてた
その後のことをほんの少しだけ。あのあと色々あって私もシンも元の世界に戻ってきた。デーモンデビルの3RDアルバム「禍〜INFINIT〜」は70万枚を超えるメガ・ヒットになった。私は相変わらず会社と部屋の行ったり来たりをくりかえしながら、シンは今ごろなにしてるんだろう、なんて思いながらサミットの大きな看板を見上げることがある。もうここには住んでないのかもね。だってあれからもシンの活躍はすごいものばかりだし(去年なんかあのh○de※と共演しちゃったし)、シンならもっともっと上に行けるはずだもん。きっともう、杉並区になんかいない。駅にそっと飲まれていく私はちいさなヘモグロビンで、シンは経済効果を大きく生み出す(心臓は言い過ぎ?だとしても)なにか大事な臓器で。私なんかがシンと過ごせた時間は、たしかに本物の異世界だったんだ。

「ねぇ」改札を抜けようとして急に声をかけられた。「両津、だよね?」え?嘘?どうして!?
「140くらいしか、なかったはずじゃ」なぜだか私は泣いていた。「なんで泣くのさ」
「わかんない…」わかんない、けど涙が次から次に溢れて止まらなかった。私みたいな小さなヘモグロビンの一粒を彼みたいな重要な臓器が見つけてくれたことが嬉しかった。

公式発表の160cmか、もしかするとそれ以上になった彼の肩にもたれて「本田…さん」「会いたかったよ、両津」「本田…」
あとは言葉にならず、わたしの嗚咽ばかりがホームに響いた。


※h○de、ホデは日本のニューウェーブロックの先駆者。代表曲は五輪入場曲にもなった「寒い夜」、ほか「生意気ーnamaikiー」など。カリスマ。
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop