私の幸せ。


「だぁれがきまぐれだって?」
声を発したその人物を見上げると、顔がかなり整ったイケメンな感じの暗い髪色の男の人が立っていた。

見たところ私達より少し年上そうだけど、先生…には見えない。


「慧さん、痛いっす。
急に殴る事ないじゃないですかー、もう!!」
蒼は少し不満げに唇を尖らせながら、そう言った。

女の私でも勝負にならないくらい可愛い。(←雪姫は無自覚な美人さん。)


「俺は、気まぐれじゃねぇよ。
しょうがねぇだろ。
理事長に呼び出し喰らってたんだから。」
「そうですか。」
何か2人で勝手に話して納得していた。
私は話についていけず、首をかしげながらそれを見守っていた。


「おっ!お前が檜山か!!」
「あっ、はい。」
やっと彼が私に気づいて声をかけてきた。
けど、何で私ってわかったんだろう??


「俺が担任の本多 慧。
いろいろあるけど宜しくな。
まぁ、こいつと仲良くなったんなら何か困った事あった時はこいつとか俺に言え。」
「はい。
でも何で私が檜山だって分かったんですか?」
「自分の担任の生徒の顔と名前くらいちゃんと覚えてる。」
「そうなんですか。
ありがとうございます。」
先生が事情を知ってても優しくしてくれるのが嬉しくて、私は自然と笑顔でお礼を言った。


「よし、遅くなって悪かったな。
ホームルーム始めんぞ。」
先生が通りすがりに私の頭をポンポンっと優しく叩いた後、そう言いながら教卓まで歩いていった。

「じゃあ自習ー。」
でも、ホームルームが終わると直ぐ出ていってしまった。



それからまた蒼と話してたけど、他の授業も先生来ないし授業も始まる気配がない。

「ねぇ、この学校って授業は?」
「んー、ゆっきー真面目そうだから知らないよね?
此処ね、テスト前しか授業ないんだ。
あとはほぼ自習。
あっ、僕今からちょっと行くとこあるんだけど、雪姫も行く??」
「へっ、良いの??」
「うん。
ゆっきーなら大丈夫な気がする。
ちょっと待ってて。」
そう謎の言葉を呟いて、蒼は携帯を取り出し誰かにかけ始めた。

「あっ、僕だけど。
うん、今から行くつもり。
あのさ、1人連れて行きたい子が居るんだよね。
大丈夫、大丈夫。
僕が保証するから。
うん、じゃあ後でね。
…よし、行こう?」
電話で誰かと少し何事かを話してから携帯をしまうと、蒼は笑顔でそう言った。


「うん。」
よくわからないけど、とりあえずついていく事にした。


まさか、思いもよらない出逢いをするとも知らずに…。



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