【完】ファムファタールの憂鬱
あの時、抉られた胸の痛みはまだ鮮明に覚えてる。
人間、それも幼い頃に受けた心無い言葉は、大きくなってからも尚、この身を雁字搦めにする。
「ブース」
言われ続ければ続ける程…自信は潰れて粉々になっていった。
その男の子が、どうしてそこまで私を傷付けるようなことをしたのか、今もそれは分からない。
けれど、それはもう、遠い遠い過去のこと。
手を付けられないくらい、果てしない…過去のこと。
今更どうにか出来るほど、私の傷口は埋められない。
でも…もうその男の子を責めることは出来ないんだ。
だって、たしか彼は散々私を虐め抜いたのち、何処かの学校に転校してしまったから…。
だから、きっと私は今までその過去を封印出来ていたのかもしれない……。