飛鳥くんはクールなんかじゃない



「今日は1時までだから。早く帰ってくる」

「なに、その報告」

「花帆が言ったんだろ?」



意地悪に笑う飛鳥くんに、やられたと思った。


覚えてないわけじゃない。ちゃんとしっかり覚えてる。


けれどそれを飛鳥くんが覚えているだなんて、想像もしていなかった。




「待ってて」

「うん……待ってる」


言われるがまま、コクリと頷くと、飛鳥くんは満足気な表情をしてバイトへ向かって行く。


その後ろ姿を眺めながら、ドキドキと鳴る心臓の音を抑えるのに必死だった。




……自惚れちゃうよ、飛鳥くん。


一緒に住んでるわけでもないのに、幼なじみだからってだけでこんな会話ができるだなんて。



なんだかんだ、やっぱり私は飛鳥くんに甘やかされている。いや、甘やかされ過ぎだと思う。



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