飛鳥くんはクールなんかじゃない
「好き……」
もう姿が見えなくなったところで言葉をこぼしても、誰かが拾ってくれるわけではない。
それでも、気持ちが溢れてしまって言わずにはいられなかった。
好き……。大好きだよ、飛鳥くん。
きっと私が気づかなかっただけで、ずっと前から好きだったんだ。
ただ自覚しただけなのに、どうしてこんなにも幸せな気持ちになるんだろう。
家に戻ると、なんとなくオシャレをしようと思った。
きっと……ううん、確実に飛鳥くんの影響。
黒文字のロゴが入った白いTシャツに、デニムのスカート。髪は巻いてサイドアップにし、少しお化粧もしてみる。
「リップ……は、赤かな」
いつもピンクのリップをしているけれど、なんとなく赤のリップグロスを塗った。