飛鳥くんはクールなんかじゃない



「あっ、もう花火上がる時間だよ」


りんご飴を手に入れた頃には、もう花火が打ち上がる時間にさしかかっていた。


急いで花火が見える広場へと向かおうと、りんご飴を片手に飛鳥くんと再び歩き出す。



ごった返す人の中だけど、飛鳥くんがしっかり手を握ってくれているから、大丈夫。



「あれ?飛鳥くん、そっちって……」


と、人ごみの流れに乗って私の手を引いて歩いてくれていた飛鳥くんが、不意にその流れから外れた。


慌てて飛鳥くんの名前を呼ぶけれど、「大丈夫」しか言わない彼は、そのまま歩き続ける。



混み合っていて聞こえなかった私の下駄の音がカラカラと聞こえるようになった頃には、周りに人はいなかった。


代わりに葉っぱが風で揺れる音や、遠くでさっきの賑わいが聞こえる。




「特等席」


そう言って振り返った飛鳥くんの背後の夜空に、大きな花火が舞い上がった。



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