ママの手料理
それまで、意味が分からないといった顔をしていた仁も、途中から伊織とトランプで遊び出した航海も、皆が目の色を変えて頷いた。



『俺がチビの仇をとる』


あの日、覚悟を決めた目をしながらそう言った琥珀。


「紫苑ちゃんの仇は、俺と琥珀でとるんだー!」


その言葉をたった今、大也が口にした。


「そう、その意気だよ」


僕は、また頬に笑みを浮かべる。



(怒りを力に心で闘え)


ずっと昔、誰かに言われた言葉が蘇る。



もう、目的地はすぐそこだ。


そう考えながら、僕は勢い良くハンドルを切った。





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「よし、皆着いたよ。血がついちゃうと洗濯に困るから、ボアジャケットは脱いでね」


湊の声で、俺ー伊藤 大也ーは我に返った。


「もう着いたの?今何時、2時半?」


それまでうるさかった車内は一変し、一言も話さずにボアジャケットを脱いでいく他のメンバーに続きながら、俺はぽつりと大きめの独り言を零した。


狭い車内で大の大人を含む男性6人が一斉にボアジャケットを脱ぐものだから、俺も皆も色々な所に身体をぶつけてしまい。


「ふざけんな誰だよここにコーヒー置いたの、パソコンにかかったら危ないだろうが。どうせ琥珀だな3回死ね」
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