ママの手料理
「その時が来れば紫苑さんも分かると思いますが、僕らは色んな意味で普通じゃないんです。…何度も聞かされたと思いますが、血が繋がってないし、生き方が分からない迷子の集まりだし、他にも色々あるんですけど…」


彼が唾を飲み込んだのが分かる。


「此処に住んでる人は本当の家族と色々あったから、家族って形が分からない人しか居ないんです。…だから、形が分からないから自分達で形を形成するしかなくて、その環境の中で過ごしていると、不意に」


一呼吸置いて、彼は言葉を紡いだ。


その時一瞬だけ、彼は今までの引きつった様な無理をしている様な笑顔とは違って、初めて力が緩んだ様な自然な笑顔を見せた。


「幸せだな、とか、これが僕が望んでた家族だな、とか、感じる瞬間があるんです。…またいつか、絶対に紫苑さんも感じますよ」


(……幸せなんて、私は感じられるのかな)


彼の真っ直ぐな瞳からゆっくり目を逸らすと、彼も私の視線を追い掛ける様に目線をずらした。


「あーいや、最初こそ嫌で嫌で堪らなくて、ここで暮らすってなった時に凄い反発したりしてたんですけど」


「…うん」
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