ママの手料理
「でも、何て言うんでしょうか……詳しい事はまた今度言いますが、僕は家族が大嫌いだったんです、本当に」


暇さえあれば彼らを殺す方法を考えてたくらい、目の敵にしてたんですよ、と、彼はまたぎこちない笑みを絶やさずに続けた。


「ちょっと色々あって、親が、というか家族っていう1つのグループが嫌いになっちゃって……。親戚からもほぼ勘当されたと同然の扱いを受けてますし。だから僕も、家族が死んだ後の葬式に参加してません」


不意に、彼の目元に陰りが生じた。


「お葬式に参加してないって……。私と一緒、」


思わず、私の口から声が零れた。


それに、私を養子として引き取る事に断固反対だった私の親戚は、私の事を居ない子のように扱っていたし、何となくそこも彼と似ている。


「そうですね。…僕達、理由は違えど少しだけ共通点が多いのかもしれませんね」


航海は、私の手を見たまま微妙に口角を上げた。


「…って事は、今のここの家族?も、嫌いなの?」


微妙に間が空き、私が不意に頭に浮かんだ疑問を口にしてみると、


「そんな事あるわけないじゃないですか」


急に先程とは打って変わり、彼はサングラス越しに意思の強い瞳を私の目の中に映したー実際にはサングラスのせいであまり目は見えないー気がした。
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